蓄電池のご相談で最も多いのが「何kWhが適正か」という質問です。答えはご家庭によって違うのですが、決め方の手順そのものは共通しています。
大きければいい、ではない理由
東京都の助成は蓄電池1kWhあたり10万円という単価です。容量を増やせば助成額も増えますが、設備費用のほうが先に増えます。そして、使い切らない容量は一生かけても回収できません。
10kWhの蓄電池を入れても、毎晩4kWhしか使わないご家庭では、6kWh分は「充電されたまま朝を迎える」ことになります。その6kWhは、災害時の備えとしては意味がありますが、日々の節約には効きません。
だから容量は、こう決めます。
手順1:夜間にどれくらい使っているかを知る
電力会社の会員サイトで、30分ごとの使用量を見られる場合があります。ここで日没から翌朝の日の出までの合計を出します。
会員サイトが使えない場合は、検針票の月間使用量から概算します。一般的な戸建てで月300〜400kWh、1日あたり10〜13kWh。そのうち夜間帯が4〜6kWh程度というのが、ひとつの目安です。
この「夜間に使う量」が、日常の節約に効く容量の上限になります。
手順2:昼にどれだけ余っているかを知る
夜に6kWh使うとしても、昼の余剰が3kWhしかなければ、蓄電池に貯められるのは3kWhです。貯める電気がなければ、容量は意味を持ちません。
既に太陽光をお使いなら売電明細で余剰量が分かります。これから同時に導入される場合は、パネル容量と屋根条件から発電量を試算し、そこから自家消費分を引いて計算します。
手順3:停電時に何を動かしたいかを決める
ここからは日常の節約ではなく、備えの話です。動かしたいものを具体的に挙げてください。
- 冷蔵庫:1日あたり1〜1.5kWh程度。ほぼ必須です
- 照明・通信機器:合わせて1日1kWh程度
- エアコン:1台1時間で0.5〜1kWh。真夏・真冬は生死に関わることもあります
- 給湯(エコキュート):一度の沸き上げで3〜5kWh。消費が大きい
冷蔵庫・照明・通信に絞れば、一般的な家庭用容量で1日以上まかなえることが多くなります。エアコンや給湯まで動かしたい場合は、容量だけでなく定格出力(同時に何Wまで使えるか)も見る必要があります。
もうひとつの分かれ道:全負荷か特定負荷か
停電時にどの範囲へ電気を送るかで、機種が分かれます。
- 特定負荷型:あらかじめ決めたコンセントや回路だけが使えます。安価ですが、どこを生かすかを工事前に決める必要があります
- 全負荷型:家じゅうのコンセントが使えます。200Vのエアコンも動きますが、機器が高価になり、消費も速くなります
「停電時に家全体が普段どおり」を期待されている方は多いのですが、それは全負荷型かつ十分な容量がある場合の話です。ここは契約前にはっきりさせておくべき点です。
年数の話
蓄電池にはサイクル寿命(充放電の回数)があり、使い続けると蓄えられる容量が少しずつ減ります。10年後に何%の容量が残るかはメーカーが保証値として公表しています。カタログの容量だけでなく、この維持率も比べてください。
まとめ
必要な情報は、直近12か月の使用量と、停電時に動かしたいものの一覧。この2つがあれば、容量はかなり絞り込めます。カタログを眺めるより先に、検針票を見るところから始めてください。
本文中の使用量は一般的な戸建てを想定した目安です。実際の必要容量はご家庭の使用パターン、屋根条件、機器構成によって変わります。